2017.10.04
インサイドセールス先進国のアメリカを参考にしよう!海外の現状と日本の今後について
セキュリティ意識の高まりやネットで簡単に欲しい情報が収集できるようになったこともあり、訪問営業や電話アポなど従来の営業手法は効率が落ちてきています。
これに代わる営業手法として注目されているのがインサイドセールスです。インサイドセールスは顧客と面談せずに電話やメールを活用して見込み客を育成する営業手法となっています。
今回はインサイドセールスの先進国であるアメリカの例を参考に、日本のインサイドセールスとの違いをみてみましょう。
日本のインサイドセールス事情
日本でインサイドセールスを導入している企業はまだ少ないようですが、IT系企業などを中心に導入する企業が着実に増えています。
日本のIT企業などでは主に、ホームページからの資料請求や展示会、セミナーの名刺情報などの見込み客情報に対して、インサイドセールスでアプローチするのが一般的です。インサイドセールスによって成約の可能性が高いと判断された見込み客については顧客と面談して商談する営業部門に引き継ぎます。成約可能性が低いと判断された見込み客に対しては電話やメール、DMなども使って継続的にアプローチすることで関係性を高め、ニーズが高まるように育成するのがインサイドセールスの重要な役割です。
ニーズが高まって商談化できるようになった見込み客は営業部門に引き継ぎます。このように見込み客の成約可能性を高めるのがインサイドセールスで、成約可能性が高い顧客と面談するのが営業部門と、分業化されるのがインサイドセールス手法の特徴です。
またインサイドセールスでは成約後のアフターフォローやアップセル、クロスセルなども行います。営業部門は電話アポやアフターフォローなどの業務から開放されて顧客との面談や提案に集中できるようになるので、営業活動が効率化して成約率アップや売上アップにつながるのです。
アメリカのインサイドセールス事情
ではインサイドセールスの先進国であるアメリカの例をみてみましょう。
アメリカではリーマンショック以降、営業のインサイドセールス化が進み、その人員は訪問営業を行うフィールドセールスの人員よりも多くなっています。ただし、そこは先進国。電話やメールなどを使って顧客と面談せずにセールスを行うのは日本と同じですが、大きく違う点が1つあります。
それは商談からクロージングまでをインサイドセールスで行うことです。日本のインサイドセールスの大きな目的は見込み客を育成して営業部門に引き継ぐことであり、自ら商談やクロージングまでを行うことはありません。
ところがアメリカでは成約までをインサイドセールスで行うのです。そのためアメリカではインサイドセールスを「バーチャルセールス」「リモートセールス」とも呼びます。また電話やメールよりも「ウェブ会議システム」を使って商談することが多いのも特徴です。
つまりアメリカのインサイドセールスは日本のように営業プロセスの一部を担当するのではありません。直接顧客と会って面談することはありませんが、その内容は営業そのものといえるでしょう。
アメリカでインサイドセールスが伸びている理由
それではアメリカでなぜこれほどインサイドセールスが伸びているのか、その理由を探ってみましょう。
営業の効率化
直接顧客と面談するフィールドセールスでは、必ずしも成約可能性が高い順に訪問することはできません。地理的な事情で成約可能性が低い顧客との面談が優先され、成約可能性が高い見込み客が後回しにされることもあります。
インサイドセールスなら成約可能性で優先順位が決められますので売上アップにつながるのです。
コストダウン
アメリカは国土が広いこともあって、訪問営業は日本に比べて時間やコストがかかります。インサイドセールスを導入することによって時間やコストを大幅に削減することが可能です。
IT技術の発達
ウェブ会議システムやクラウドなどIT技術が発達したおかげで、遠隔地にいても実際に面談しているかのように商談することができるようになったのも大きな理由です。
顧客が面談を望まない
欲しい情報はネットで簡単に入手できるため、顧客自体が営業マンの説明を必要としなくなってきました。また直接会って面談するよりも手軽に連絡を取り合えるメールや電話、ウェブ会議システムが好まれる傾向もあります。
拡大する情報量と営業に求めるものの関係
インサイドセールスが注目される背景には、顧客が得ている情報量の増加があります。インターネットの普及で、情報チャネルはかつてないほど拡大しているためです。
顧客が商品やサービスの購入を検討しようとする場合、さまざまなルートから情報収集を行い、数多くの選択肢から希望にマッチするものがないかを探します。製品情報などの基本的な知識は、すでに顧客自身で苦もなく入手できる時代です。
訪問営業でパンフレットを見せながら商品の紹介する時代は終わりました。つまり、過去に営業が果たしていた役割を望んでいる顧客はいません。営業に求められるものは、もっと先鋭化した情報提供であり、要求にぴったりとマッチした商品の提案です。それを実現させるためには、顧客の具体的なニーズをつかんでおく必要があります。
これまでの営業手法では売り手側が、「この客にはこれを売ろう」とターゲットに狙いをつけ、商品に関連するパンフレットや資料で圧倒しながら相手の説得を行うという形式が主流とされてきました。顧客リストの中から条件にあった客を絞り込み、日参して、熱意の末にいかに相手を説き伏せるかという技量が営業に問われてきたわけです。
しかし時代の変化とともに、そうした古い営業スタイルでは成果が出せなくなってきています。特に商品が高額になる傾向の強いBtoBでは、営業を上回るほどの情報を持つ企業の担当者と向かい合う場面もしばしばです。企業の意思決定は論理的に行われるため、担当者を説き伏せる明確な材料がなければ成約にはこぎつけません。
また、営業ひとりが販売計画から見込み客発掘、提案、交渉、契約後のフォローまですべて行う時代錯誤な営業体制では、顧客が本当に求めるサービス提供は難しいのが現実です。インサイドセールスは成約の可能性を求めて顧客との接点を持ち、地道に営業情報を収集していきます。一時的なものではない、日々変化する顧客側の状況やニーズをとらえることに注力し、顧客とのゆるぎない関係の構築を目指すのです。接点の蓄積の中で、ときには顧客自身が気づいていない課題を見出す場合もあります。
インサイドセールスの役割は、自社の商品やサービスを購入してもらうための道筋をつけるものですが、決して一方的な姿勢であってはうまくいきません。顧客の悩みや課題に対して問診を続け、それが提案につながる情報源となります。
現状を隈なくリサーチすることで、顧客側が今の時代に求めている、営業の足掛かりとなるでしょう。営業はただ自社商品の優秀さを力説するのではなく、精査された顧客データを元に、説得力のある交渉へと臨む新しいスタイルを実践することができます。
アメリカ型インサイドセールスと日本型営業スタイルの違い
より効率的なビジネスが好まれるマーケティング先進国のアメリカでは、その戦略に従ってフィールドセールスをインサイドセールスへと置き換えていくことが進められています。すでに営業活動の8割以上をインサイドセールスが占めるといわれており、今後もフィールドセールスの割合は減少の一途をたどることでしょう。
他方、日本のビジネスの現場では今でも対面による契約が一般的であり、インサイドセールスを導入する際も、あくまで営業支援としての扱いです。インサイドセールスで得られたデータからセールスリードが創出され、フィールドセールスへ引き渡されるという連携プレーによって契約獲得の拡大を目指します。
ビジネス文化の違いから、インサイドセールスそのものが営業の本流となっているアメリカと、まったく同じ方向性を持つとは考えにくいのが現状です。しかしこの先、インサイドセールスが日本型の営業スタイルを大きく変えていくことが推測されます。
顧客との中長期にわたる関係構築の要となり、マーケティングとフィールドセールスのハブ的役割を果たすことで、セールスリードの創出や顧客のステータス管理が大幅に改善されることでしょう。データの蓄積から顧客を各ステージにカテゴライズすることができ、プロモーションやセミナーの対象の設定が容易になります。合理的で無駄のない営業活動の一連の流れを実現するための有効手段として、インサイドセールスはさらに注目されていくはずです。
アプローチに特化する営業と、その前段階を請け負うインサイドセールスとの間で業務が分業化され、営業担当の負担が軽減されます。加えて多くの顧客と接点を持つことが可能となり、カテゴライズとスクリーニングの実施により、営業に提供される有望なセールスリード数の増加が見込めるでしょう。
日本の場合、フィールドセールスが突如消滅することはまずあり得ませんが、従来の営業が負っていた多くの部分をインサイドセールスが引き受けることは可能です。国内の導入例が公表されるに従い、得られる効果の大きさはすぐに理解されるでしょう。
インサイドセールスの導入にも、さまざまな形があります。インサイドセールス導入にあたっては確実に成果を上げるため、自社の営業体制の中で状況に合わせた業務配分を検討してください。
日本のインサイドセールスはどうなる?
アメリカのインサイドセールス事情をみてきましたが、日本とアメリカでは同じインサイドセールスという言葉は使っていてもその手法は異なっています。
日本の場合は営業マンが直接顧客と面談して商談とクロージングを行うのが一般的です。日本の営業マンには「直接会って信頼してもらう」「名刺を重ねて誠意を伝える」というような意識もあって、面談が重要視される傾向があります。しかし今後は、アメリカのように直接会わずに商談する傾向が強くなっていくでしょう。
特にBtoB取引であればウェブ会議システムなども整っていますし、わざわざ面談しなくても商談を行うことができます。「資料はメールで」「プレゼンはウェブ会議システムで」というようなケースも増えていくはずです。
また個人ユーザーの場合であっても、面談を望まない顧客が増えていくことも予想されます。このような状況を踏まえ営業を効率化して売上を上げるためには、どのような手法が自社にとって最適なのかを慎重に検討することが重要です。