2023.07.05
インサイドセールスとカスタマーサクセスの違いは?分業化のコツも解説
目次
業務効率化や生産性向上のためなど、現在さまざまな理由で営業プロセスの分業化が進みつつあります。
またそれに伴い、「インサイドセールス」や「カスタマーサクセス」といった新しい職種も生まれてきています。
とはいえ、営業プロセスの分業化とは聞くものの、実際にどのようなものなのかイマイチわからない…なんて方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの違いから、
分業化のメリット・デメリット、分業化を成功させるポイントまでを丁寧に解説していきます。
営業プロセスの分業化が注目されるようになった背景とは?
営業プロセスの分業化に注目が集まり始めた理由には、「顧客の購買行動の変化」と「雇用の流動化」の2つが関係しています。
詳しく見ていきましょう。
顧客の購買行動の変化
インターネットの普及により、誰でも簡単に情報にアクセスできるようになった現代。
顧客はモノやサービスを購入する際、情報を集め、比較検討することが当たり前になりました。
場合によっては営業担当者と直接接点をもたずに、インターネット上の情報のみで購入を決定することも少なくありません。
そうした顧客の購買行動の変化は、企業側の意識にも変化をもたらしました。
顧客へのスピーディーな情報提供や購買意欲を高める活動を重視するようになり、従来の訪問を中心とした営業(フィールドセールス)から分けて、
WEBやメール、電話を活用した営業(インサイドセールス)にも力を入れるようになっていったのです。
雇用の流動化
顧客の新規獲得から受注までを一人の営業担当者が行う営業スタイルは、営業担当者への負担が大きいとされています。
また全ての営業プロセスを実行できる人材を一から育てるのも、膨大な時間とコストがかかります。
近年では終身雇用制度の崩壊から、雇用の流動化が急速に進むようになりました。
転職する人も年々増え、営業担当者が離職した際、引き継ぎがうまくいかずトラブルになるケースが増加しています。
そんな流れの中で、離職によって発生するリスクや新しく営業担当者を育てるコストを下げるために、
営業プロセスの分業化が注目されるようになっていきました。
インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの違い
営業プロセスの分業化が注目され実際に導入が進む中で、それぞれの仕事内容が気になる方もいるのではないでしょうか。
ここでは、営業プロセスの分業化におけるインサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの役割について説明していきます。
インサイドセールス
インサイドセールスは内勤型営業とも呼ばれ、メールや電話、WEB商談ツールなどを使い営業を行うものです。
新規顧客の発掘や見込み顧客の育成を行い、購買意欲を高めた上でフィールドセールスに引き継ぐ役割をもっています。
場所にとらわれずに活動できるので、移動時間や移動にかかるコストを削減できるのがポイントです。
もともとは国土の広いアメリカで生まれた営業手法ですが、コロナウイルス感染症の拡大に伴い、訪問営業が困難になった日本でも導入する企業が増えています。
フィールドセールス
フィールドセールスは外勤型営業のことを指し、顧客先に訪問し営業を行うものです。
インサイドセールスから引き継いだ見込み顧客との商談で、受注・契約に結びつける活動をするのが主な役割といえます。
顧客と顔を合わせて話ができるため、信頼関係の構築がしやすく、商品やサービスの魅力を相手が納得できるまで直接伝えられるのが強みです。
従来の営業手法になりますが、インサイドセールスと分業することで、最近では商談により集中できるようになっています。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、その名の通り「顧客の成功体験の実現」を取り扱うものです。
フィールドセールスで受注・契約となった商品やサービスを実際に使ってもらい、課題や悩みを解決し成功体験となるよう支援していくのが役割になります。
顧客が商品やサービスの価値を身をもって体験・理解することは、顧客満足度アップや顧客離れを防ぐことにつながります。
近年増えているサブスクリプション型の商品やサービスを扱う場合は、継続利用が売上向上に欠かせないため、とくに重要なポジションになるといえるでしょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの内容から、それぞれの違いを見てきました。
この中のカスタマーサクセスは、カスタマサポートとよく混同されがちです。
営業プロセスの分業にも関わるカスタマーサクセスと、カスタマーサポートの違いについて解説していきます。
役割の違い
カスタマーサクセスの役割は先ほどもお伝えしましたが、「顧客の成功体験の実現」です。
顧客が商品やサービスを使って成功体験を得られるようサポートし、顧客満足度が上がるように活動していきます。
商品やサービスの購入・導入時から実際に価値が実感できるまで、継続して顧客を支援していくのが特徴です。
一方カスタマーサポートは、顧客に課題やトラブルが生じたときに、的確に解決に導くことが重要な役割になります。
クレーム対応などはこのカスタマーサポートの一部です。
カスタマーサクセス同様、顧客満足度を上げることにも貢献しますが、どちらかというと顧客満足度を下げないように活動する場面が多く見られるでしょう。
またカスタマサポートは顧客側で問題が起きた時に動くため、カスタマーサクセスと異なり、その場での単発的な支援となります。
取り組む姿勢の違い
カスタマーサクセスは顧客の成功体験を実現させるために、「能動的」に動くことが求められます。
商品やサービスを導入・使用する途中で失敗したり、つまずくことがないよう、先回りして問題となりそうな点をチェックしサポートしていくのです。
顧客が望む成功を理解し、顧客の行動を予測して働きかけていく姿勢が必要になります。
一方カスタマーサポートは顧客からの問い合わせに対して動くので、取り組む姿勢としては「受動的」です。
顧客に課題やトラブルが発生した場合のみサポートを行い、必要以上に顧客との関わりはもちません。
ただ普段からクレーム対応の履歴を残したり、FAQの作成を行っておくことで、迅速に問題解決できるよう準備しておくことが大事になります。
KPIの違い
カスタマーサクセスにおけるKPIは「解約率」「継続率」「顧客満足度」「アップセル率・クロスセル率」などが一般的です。
どれだけの顧客が継続して商品やサービスを使用し続けてくれているか、商品やサービスに対する満足度はどれくらいかを測定することで、
顧客を成功体験に導けているのかを評価していきます。
一方カスタマーサポートでは、「対応回数」「処理時間」「メールの返信速度」「顧客満足度」などがKPIとして設定されることが多いです。
いかに迅速に顧客の問題を解決したか、またどれほど多く顧客の不満を減らせたかがカスタマーサポートでの成果になります。
営業プロセス分業化に伴うメリットとデメリット
営業プロセスを分業化をすることには、一体どのような良さがあるのでしょうか。
ここでは、営業プロセス分業化におけるメリットとデメリットを解説していきます。
営業プロセスを分業化した場合のメリット
営業プロセスを分業化した場合には、3つの大きなメリットがあります。
具体的に見ていきましょう。
①生産性を上げられる
営業プロセスを分業化することにより、業務の標準化が行われます。
従来の営業手法では、営業の成果は営業担当者のスキルやセンスによって差が出るものでした。
それが標準化されることで、誰でも手順やルールに沿って業務に取り組むことができるようになり、
結果として業務の効率化が進み生産性の向上につながっていきます。
また営業の属人化の防止や、新入社員や中途社員などの教育にかけるコストの削減にも役立ちます。
②専門性を高められる
営業プロセスの分業化は、部門ごとの専門性を高めることにも効果が期待できます。
架電営業やデータ分析など、集中して担当業務に取り組むことにより、そのぶんの経験や知識が蓄積されるようになるのです。
各部門で特定の業務に特化することは、業務の質を上げることにもつながります。
加えて適材適所の人員配置も可能になり、各人材が得意な分野で能力を最大限発揮できるようにもなるでしょう。
③問題の可視化ができる
営業における問題点の可視化ができるようになるのも、営業プロセス分業化の良さです。
従来の営業手法では、営業担当者が一人で新規顧客獲得から受注・契約までを行っていたため、その過程で問題があっても発見しづらい面がありました。
その点分業化では、各プロセスにKPIを設定して効果を測定することで、どこに問題があって売上が伸び悩んでいるのかが見えやすくなります。
さらに問題点の把握から改善へのスピードが上がるのもポイントです。
営業プロセスを分業した場合のデメリット
営業プロセスを分業した場合、デメリットとしては全体の目標を見失いやすくなる点が挙げられます。
分業化することで、部門内のみの目標に目が行きがちになり、最終的にどこを目指しているのかがわからなくなってしまうのです。
全体の目標の見落としは、他部門への関心や理解の低下を招き、部門間の連携にも悪影響がでます。
各部門の協力なしには企業の成長はありません。
部門ごとの担当業務を明確にした上で、スムーズに連携が取れる体制づくりが大切です。
営業プロセス分業化を成功に導くためのポイント
メリットも多い営業プロセスの分業化ですが、成功させるには3つの大事なポイントがあります。
それぞれを詳しく説明していきます。
情報をきちんと共有する
営業プロセスの分業化では、情報の共有が何よりも重要です。
これまでは一人の顧客に対して、一人の営業担当者が携わる形でした。
しかし分業化すれば、一人の顧客に対して関わる人材は当然増えることになります。
顧客とどのようなやり取りをしてきたか、顧客にはどのようなニーズがあるのか。
そうした情報をしっかり部門間で共有することで、売上向上や顧客満足度の向上につなげていくことができます。
適切なタイミングで顧客を引き継ぐ
部門間、とくにインサイドセールスからフィールドセールスへの顧客情報の引き継ぎでは、適切なタイミングを見極めることが必須です。
見込み顧客の育成が進んでいない早い段階でフィールドセールスに引き継いでも、受注にはなかなか結びつかないでしょう。
また引き継ぐタイミングが遅ければ、商談のチャンスを逃し、顧客が別の商品やサービスを選んでしまう可能性もあります。
分業化する時には、どの程度まで顧客の購買意欲が高まったら引き継ぎを行うのかを、各部門同士でよく話し合い決めておくことをオススメします。
ツールを積極的に活用する
ツールを活用することにより、営業プロセスの分業化における部門間の連携や情報共有がしやすくなります。
情報の伝え忘れや見落としを防ぐためにも、積極的に活用していきましょう。
ツールにはSFAツール(営業支援システム)やCRMツール(顧客管理システム)、名刺管理ツール、WEB商談ツールなどさまざまなものがあります。
導入する際にはどのような目的で使用するのかを明確にし、機能や操作感を調べた上で自社に合ったものを選ぶことが大切です。
まとめ
ここまで、営業プロセス分業化におけるインサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの違いや、
分業化を成功に導くポイントについて解説してきました。
営業プロセスの分業化は、生産性や専門性を高められる良さがありますが、ただ行えばいいわけではありません。
それぞれの部門の仕事内容をよく理解し、協力体制や情報共有の仕組みを作る必要があります。
これからの時代、顧客の購買行動の変化や雇用の流動化が進む流れにより、さらに営業プロセス分業化が求められるようになっていくでしょう。
ぜひ今回の記事を参考に、分業化の導入を検討してみてください。